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浜田宏一
※「ブラックジャックによろしく」より (著者:佐藤秀峰、サイト:漫画 on web、URL:http://mangaonweb.com)


白川日銀総裁の約1ヶ月前倒しの辞任が報道されました。もちろん主義主張には賛否両輪があると思いますが、彼の筋の通った説明と真摯で愚直な姿勢には敬意を表します。個人的には、現時点では21世紀最高の日銀総裁だったと思います。

白川氏の師とされているのが、浜田宏一氏です。しかし、彼の話を見ていると、白川氏とは雲泥の差です。かなりのトンデモ論がありました。
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浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー 「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換 インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」


ソニー・パナソニック・シャープの苦境は、経営判断の失敗

浜田宏一氏:「円高でエルピーダメモリがつぶれ、奇跡と言われた高度成長を担っていた輸出産業、ソニー、パナソニック、シャープなどが苦しんでいるのは、超円高のせいです。」

円安の方が望ましいのは確かですが、同じ輸出企業の日立や三菱電機や東芝は、壮大な円高のもとでもピンピンしています。円高が進んだこの間に、日立は2期連続で過去最高益を更新しました。ソニー・パナソニック・シャープの苦境は、第一義的には経営者が無能であり、致命的な経営ミスを犯していたことだと個人的には思います。

ソニーは、ストリンガーのお気に入りと外国人が跳梁跋扈して、膨大な赤字の山を築いているにもかかわらず各々が数億円の報酬を貪り、経営者が仕事をした気になるだけの頻繁な組織改編で混乱がもたらされて競争力を喪失し、ソニーを去った有能な技術者が続々と韓国勢に転職するという大いなる皮肉を生んでいます。

パナソニックは巨額の三洋電機の買収の失敗、液晶に対する競争力が低くて価格も下落の一途をたどったプラズマテレビへの巨額投資など、中村邦夫氏・大坪文雄氏の経営ミスが致命的でした。シャープは、片山幹雄氏の巨額投資が不良資産の山となり、現在の苦境を招きました。

ソニー・パナソニック・シャープの苦境は、無能な経営者による無能な経営が主因としか言いようがないでしょう。為替が円高になる可能性は十二分にあるわけですから、それを想定した経営を行う必要があり、円高になったら一巻の終わりになるような経営をしている経営者は無知蒙昧の輩としか言い様がないと思います。

もちろん日本の輸出企業にとっては、円安の方が望ましいのは確実であり、足元の為替の動きはフォローになっていますね。何とか立ち直って欲しいところですね。スマホでは、ソニーのXperia ZやシャープのAQUOS PHONE ZETAは良い端末だと思います。


金融共産主義

浜田氏:「正しい経済理解に基づいて金融政策をやっていれば、こんなに円高になることもないし、高度成長期のように緩やかなインフレ率は実現できるはず」

この方は金融共産主義者のようでして、メディアのいくつかのインタビューを見ると、金融政策だけで日本の課題は解決可能という認識のようです。「数か月でデフレ脱却可能」とまで言っていました。

金融政策はすぐに効くわけではなく、遅効性があるというのが世界の常識です。数ヶ月でデフレ脱却可能となると、ものすごい円安に持っていく必要がありますが、それではどう考えても激しいコストプッシュインフレとなり、国民の可処分所得の上昇につながらないため、厳しい話だと思いますね。

何が何でもインフレにすればいいわけではなく、収入が上がり使えるお金が増えて消費・投資が活発化して、需要が伸びることで物価が上がっていくディマンドプル・インフレを実現するのが重要だと思います。そのために大胆な金融政策を発動するというのが正統なリフレ本流派の意見であり、それには頷けます。

ちなみに王道リフレ派のバーナンキFRB議長は、以下の通りに述べています。

「非伝統的金融政策(以下、非D)が経済活動・物価上昇に及ぼす効果は不明確であり、非Dの実施に伴うコストは、伝統的政策に通常は伴うコストを超える。したがって、非Dの実施に対するハードルは、伝統的政策を行う時よりも高くする必要がある。

さらにこの文脈において、非Dは一般的な金融政策の限界に直面する。その限界とは、より広範でバランスがとれた経済政策によって達成できることを、金融政策のみでは達成できないということだ。

また、特に国が直面している財政・金融のリスクを金融政策で中和することはできず、経済への成果を微調整することもできない。」


「国債を直接引き受けてもいい」という愚論

浜田氏:「後でちゃんと売却(市中から資金を吸収)できるなら、国債を直接引き受けてもいいのではないか。」

「後でちゃんと売却」できなくなる危険性が高いから、中央銀行の国債引受けは行なってはならないというのが人類の常識です。例えるなら、「事故に遭わないなら、時速300kmで運転すればいい」と言っているようなものです。

財政ファイナンスの危険性については、前回述べたので省略します。


経済政策のためには法律を無視していいのか?

浜田氏:「経済学者は法律家と違い、法や政治的意味での行為の正当化に興味はありません。外債などを買えば円は安くなるため、金融政策にとって非常に有効です。実体を伴わない法律論でとるべき政策をとらないのは、筋違いではないでしょうか。」

「法や政治的意味での行為の正当化に興味はありません」「実体を伴わない法律論でとるべき政策をとらないのは、筋違い」って、日本は法治国家であり、将軍様がやりたい放題の人民国家ではありません。

「経済政策をとるために、法律を改正すべき」という議論ならわかりますが、「俺様が正しいという政策をとるためには、法律なんてどうでもいい」などというのは、日米欧を始めとする自由主義法治国家ではトンデモ論であり、先進国の政府のブレーンとしてはいかがなものかと言わざるを得ません。

浜田氏の主張は人民解放軍・総参謀部長であるような代物であり、中露北あたりのアドバイザーが適職ではと思ってしまうのが正直なところです。


もはや意味不明

浜田氏:『雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます。よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。』

名目賃金が上がると企業収益が増えないからダメで、雇用が増えるのはOKのようです。しかし、雇用が増えると賃金総額が上がって、企業収益が圧迫されます。

「賃金の上昇よりも雇用の増加による人件費増の方が日本が豊かになる」旨のロジックが意味不明です。今の日本は失業率4%前半であり、世界的に空前の低さです。日本ではほぼ完全雇用が実現しており、これ以上雇用を増やして失業率を低下させるのにどれ程の意味があるかよくわかりません。

失業率の推移(2007~2012年) - 世界経済のネタ帳


米国では社員の名目賃金を下げることはせず、解雇することが一般的です。賃金を下げて雇用を増やすべきというなら、それと真逆である米国はダメダメになってなければなりません。全然そうではありません。

日本の失業率は現在4.2%まで低下しています。著名エコノミストの間では、現在の日本経済は完全雇用状態からそれほど大きくは乖離していないという意見が多いです。これ以上、日本全国中の賃金を下げてまで失業率を減らすことにどれ程の意味があるのか意味不明です。

「おいらたちの生活がよくなるお!」と浜田氏を無邪気に支持していた一部のネット界隈においては、浜田氏の「賃金上がらない方がいい」発言に、「ざわざわ…ざわざわ…」となっているようです。しかし、インフレ誘導は、国民の生活水準を切り下げることによって、国の税収を増やして輸出企業等の一部の業界の利益を増やす政策ですから、認識が甘いですね。

日本企業の経営者は、徐々にグローバル肉食系へと変貌しつつあり、賃金総額は下落の一途を辿っています。戦後最長の景気拡大だった2003~2007年も同じです。そういう状況下では、インフレになっても、それで恩恵を受ける輸出企業・証券会社・不動産会社など一部の業界の一部の社員の賃金は上がりますが、殆どの人はインフレ率ほどには上がらない可能性が高いでしょう。

ちなみに私は自身の資産は株式や外貨資産がやたらと多く、勤務先も株高・円安が本当に助かり、金利が過度に上昇するのは困りますが、ほとんど満期保有債券なので、余程の流動性危機にならない限りは影響は小さい状況です。私利私欲の観点では、「偉大なる浜田大先生万歳!万歳!」ですが、ポジショントークはしません。

1930年代の高橋是清の大規模なリフレ政策の時期は、実質賃金はリフレ政策開始前が最も高く、開始後は減り続けたようです。インフレ率よりも名目賃金の上昇率が低かったわけです。

また、この10年間は、実質賃金どころか、名目賃金ですらインフレ率と相関性はありませんし、インフレ率と失業率も無関係です。


リフレ派にも正統本流派と、トンデモ派がいる。

「リフレ派」と呼ばれる方々も千差万別であり、バーナンキ氏のような正統リフレ本流がいる一方、主張が支離滅裂で破滅的なトンデモ派がいます。私は大胆な金融政策を志向する正統なリフレ派には頷ける面も多いし、敬意を表します。しかし、一部に宗教がかったヤバイ方々もおられます。

これについては、非常にその通りだと感じるエントリーがありましたので、引用させて頂きます。

りふれ派の社会的機能について考える

『理論的にも、実証的にも、明らかに破綻しているが、それは不十分な政策のせいだと言いつづけている。お布施が足りないので御利益が無いと主張する宗教団体のようだ。インフレ目標政策の効果やデフレの弊害を淡々と説いている人には、むしろ邪魔な存在であろう。』

『「りふれ派」はエンターテイメントの一種なので、目くじらを立てずにサブカルチャーとして見守りつつ、たまに揶揄すれば良いのだと思う。毎日のように突っ込めるネタが飛んでくる気もするのだが、実際のデータを調べる機会にはなるかも知れない。そういえば「りふれ派」も社会貢献をしている面もある気がする。』

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    2013.02.05 Tue l 経済・社会・金融動向 l コメント (4) トラックバック (0) l top
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