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■『ハイパーインフレの悪夢 ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する』という本を読みました。


ハイパーインフレの悪夢


20世紀のドイツのハイパーインフレの原因は、一言で言うと中央銀行の国債引き受けでした。ドイツは第一次世界大戦後の苦境に対して、お金を刷ることで対処しようとしてしまいました。当時は、政治家も、役人も、金融の専門家も、企業経営者も、一般国民も、紙幣を刷ることで危機を脱せると信じ切っていたようです。

当時の様子を、イギリスの駐独大使は次のように述べています。「インフレとは、様々な意味でドラッグのようなものだ。最後は命取りになるとわかっていても、多くの困難に襲われたとき、人はその信奉者になってしまう」

現代の日本では、日本は財政難とデフレに苦しんでいます。そこで、日銀法を改正して政府が日銀を意のままに操れるようにして、日銀に国債を引き受けさせると真顔で主張する人が出てきました。また、景気対策で100兆・200兆の防災ニューディールや国土強靭化などという声が出ています。

果てしない金融緩和と財政支出への圧力が強まっています。ドイツの歴史を振り返るのは、私たちが今後の資産防衛を考える上で、有意義だと思います。

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■第一次世界大戦の敗戦後、ドイツは天文学的な賠償金が課され、経済が崩壊しました。ドイツの財政の切り札になったのは、国債を発行して中央銀行に買い取らせる方法でした。政府の財政支出を賄うため、国債を大量に発行しました。その結果・マルク安・インフレが進みました。

インフレはマイルドな水準であれば、経済が活性化する側面があります。ドイツはその官能的で甘美な誘惑に心を奪われました。

当初は企業は潤い、失業率は低下しました。いいことずくめに見えました。企業経営者はインフレを歓迎しました。為替相場の下落で輸出産業は大儲けとなり、銀行融資の実質的な負担が減りました。目先の利益を求める企業経営者は大喜びでした。「最初のうちは」(書籍そのまま引用)

ある企業経営者は「インフレは完全雇用を保証する手段であり、望ましいどころか、政府が取り得る唯一の政策だ」と言ったようです。今の日本でも、一部でそういう言論がありますね。

マルクの下落は当初は緩やかでした。それからしばらく不安定な上下動を繰り返し、やがて加速度的に下落し始めしました。国内から資本が流出し誰もマルクを持ちたがらなくなりました。 手押し車に山のように紙幣を積んでいかなくては買い物が出来なくなりました。

当時のイギリス大蔵省の金融調整官バジル・ブラケット卿は、次のように述べたそうです。
「優れた分別の持ち主であるはずのドイツの人々が、一部の強欲な産業資本家たちの言葉を信じ始め、誤った考えに染まりつつある。政府がインフレ金融によって、常時、収入以上に出費することは、経済に好影響をもたらすとかだ」
「外国人に、移動可能な資本や物品が買い占められ、持ち去られるということが、ドイツの国益を損ねながら進行している。」(同書から引用)

その過程で社会は惨状を呈し、政治は混乱をきたしました。当時の記録が残っています。
「みんながすぐに人を妬むようになってしまった。普通の食べ物を手に入れただけでも、周りに知られないように気をつけなくてはならない」「外国人はマルクの安さにつけ込んで、われわれの品物を片っ端から買い漁った」(同書から引用)

ドイツは外国人から不動産や企業を買い占められました。外国資本の企業では、物価の上昇に比べて賃金の引き上げが抑えられたため、しわ寄せは労働者にも及びました。

国民の間で憎しみが強まり、反動勢力に感化されやすくなり、反ユダヤ主義がウイルスのように広まったそうです。ヒトラーに対する民衆の反応は、初めは好奇の目を向ける程度だったものの、経済情勢の悪化に伴って、ヒトラーを正しい人物とみなす風潮が強まったそうです。

治安も悪化しました。食料を求める暴動はドイツ全国に広まりました。暴動は、ドイツ同様にハイパー通貨安になっていたオーストリアにも波及しました。ウィーン市内では建物のガラス窓がことごとく叩き割られ、多数の暴徒が市内中で略奪を働いたそうです。

デモ隊が政府に要求したものの中には、全外貨・ゴールドの没収があったそうです。全ての外貨とゴールドを国が取り上げるべきだとデモ隊は訴えたようです。

当時の日記が残っています。「街はまるで地震に襲われたかのようでした。家具が見る影もなく打ち壊され、歩道に散乱しています。荒らされたのは、食料品やカフェや布地屋だけではありません。」(同書から引用)

人は自国通貨をあらゆる価値の基準にし、社会的な地位・安心の拠り所にし、経済活動の成果を蓄える手段にしています。それの価値が崩壊すると、社会が麻痺してしまい、欲望・暴力・不満・憎悪がむき出しになってしまうのでしょう。

最終的にドイツはどうなったか?

個人の自由・表現の自由・出版の自由・結社の自由が制限され、軍と警察が意のままに、郵便・電報・電話事業に介入し、家宅捜索にいそしみ、財産を没収するかもしれない状況になりました。不服従をあおれば、禁固か罰金を科せられました。

ドイツでは、国民の間で物々交換が行われ、次第に唯一の信頼できる決済の手段として、外貨が用いられるようになっていました。そこでドイツ政府は、外国為替を利用した国内の決済に対して厳しい規制(禁固刑・取引額の10倍の罰金)を導入しました。また、資本の移動の許可制が導入されました。


■「外貨やゴールド現物を自宅保管すれば、日本が財政破綻しても問題ない」という意見もありますが、ドイツの事例を見ると、楽観的かもしれません。

外貨・ゴールドの決済が禁止されて刑罰化するかもしれませんし、外貨やゴールドを持たざる者(多くの人々)が暴徒化する可能性があるかもしれませんし、財産税等が導入され、軍や警察による家宅捜索があるかもしれません。

「日本国憲法は財産権を保障しているので大丈夫。インフレが起きるだけ」という意見もありますが、財政破綻のような状況下では、憲法なんて改正されると考えるのが自然。

また、ドイツやアルゼンチンの事例を見ればわかるように、インフレを放置したら社会が破綻して国家が維持できなくなるため、インフレ収束のための対策を打たざるを得なくなるのでしょう。

紙幣は普遍的価値があるものではなく、単なる交換手段に過ぎません。多くの人々に価値を信用されて初めて、使われるようになるものです。人々の信用がなければ、その紙幣には何の価値もなくなります。

繰り返しになりますが、今の日本では、日銀法改正・日銀の国債引き受けが真顔で主張され、景気対策で100兆・200兆の防災ニューディールなどという声が出ています。

果てしない金融緩和と財政支出への圧力が強まっています。彼らの辞書には、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という格言はないようです。いや、過去20年の経験にも学んでいないと思われます。

現時点では深い憂慮はありません。円と日本国債には楽観的です。しかし、もし万が一、狂ったような財政・金融政策が発動されはじめたら、円の将来に対する意識を変え、対策を採らざるを得ません。

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    2012.07.26 Thu l 資産運用の考え方 l コメント (2) トラックバック (0) l top
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