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■リスク資産への投資は、現在は大きく分けると、二つの潮流があるような気がします。

一つは、デイトレ・スイングトレード、ヘッジファンド・証券会社のトレーダーに象徴される“肉食アクティブ投資”です。

もう一つは、長期積立て投資に象徴される“草食分散投資”であり、最近は、何も考えずに毎月一定金額の投信等を購入する積立て投資を提唱する金融業者やFP、ブロガーが増えてきた印象があります。

肉食アクティブ投資は、ごく少数の勝者と大多数の敗者に分かれる世界であり、自信満々に意気軒昂と参戦したものの、凄惨に散っていった死屍累々の山が、エベレストのごとくそびえ立っている世界です。しかし、勝ち残った勝者は大きな利益を手にしています。

近年、肉食アクティブ投資の難易度の高さが知れ渡ってきて、草食長期積立て投資を提唱する声が、徐々に増えてきたのかもしれません。

長期積立て投資は、「誰にでもできる」、「社会の経済成長(企業全体でのEPS拡大)により、皆が利益を出せる可能性がある」という点で、実に優しい雰囲気があり、一般人・初心者にも受け入れやすい考え方かもしれません。

では、「長期積立て投資が、最終的に上手く行くかを左右する要因は何か」について、考えてみました。

結論から言うと、「積立て終了・取り崩し開始の前後数年間~10数年間のマーケットの状況が、決定的な影響を及ぼす」と思います。以下、順に述べます。

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■積立て投資は、毎月一定金額の投信等を購入する方法であり、当初は投資残高が僅少ですが、年月の経過とともに徐々に残高が増えていきます。

以下では、毎月5万円(年間60万円)を積立てた例で検討します。

この例では、投信等の価格変動を無視すると、1年経過後の残高は60万円(月5万×12ヶ月)、2年経過後は120万円(月5万×12ヶ月×2年)、10年経過後は600万、20年経過後は1200万、30年経過後は1800万となります。

30年間のマーケットの変動が、運用のパフォーマンスに及ぼす影響は、均等ではなく、後のほうになるほど大きくなります。同じ10%の変動でも、1年後は±6万(60万×±10%)、20年後は±120万(1200万×±10%)、30年後は±180万(1800万×±10%)の損益が出ます。

つまり、運用残高が少ない初期の時期(積立て開始後しばらく)のマーケットの変動が、運用の成否に及ぼす影響は、一生涯のトータルで見ると、それ程大きくはありません。

2005~2007年に積立て投資を開始して、現在マイナスの方がいらっしゃるかもしれませんが、今後20~30年間積立て投資をするのであれば、現在のパフォーマンスは気にしなくていいと思います。

他方、積立て終了前後、運用残高が積みあがった時期のマーケットの変動は、生涯の運用の成否に大きな影響を及ぼします。

■毎月5万円(年間60万円)を30年間積立てる場合について、具体的に数字で検討してみます。簡略化して、「(前年までの残高+当年の積立額)×利回り」で残高の推移を計算してみました。

まずは安定的に1%複利と3%複利の場合です。※単位は万円

<1%複利>
1年後・・・60.6(60万×1%)
2年後・・・121.8((60.6万+60万)×1%)
10年後・・・634.0
20年後・・・1334.4
29年後・・・2027.1
30年後・・・2108.0

<3%複利>
1年後・・・61.8(60万×3%)
2年後・・・125.5((61.8万+60万)×3%)
10年後・・・708.5
20年後・・・1660.6
29年後・・・2794.5
30年後・・・2940.2

以上の通り、利回りが上がると、30年後の資産額は大きく上昇することになります。これが複利効果であり、こうした数字を根拠に長期投資が提唱されることもよくあります。

国債や定期預金などの確定利回りものは100%その通りであり、できるだけ早くから積立て長期投資をするほど、資産額も大きく増えます。

では株式投信の積立てはどうか。ここでは、4年間は年率+10%複利で上昇して、5年目が-25%という、現実にありそうな数字で計算してみます。

<4年間は年利10%複利、5年目が-25%>
1年後・・・66.0
2年後・・・138.6
3年後・・・218.5
4年後・・・306.3
5年後・・・274.7
10年後・・・576.4
20年後・・・1271.4
29年後・・・2752.6
30年後・・・2109.4

この通り、30年後の資産額は、1%複利とほとんど同じになってしまいました。 資産が最大まで積み上がった最後の30年目で-25%となっていることが、運用の成否に直結しています。29年目は3%複利と同じくらいの成果でした。

もう一つ例を挙げます。27年後までは5%複利、最後の3年間-15%だった場合は、以下の通りとなります。

<27年後までは5%複利、最後の3年間-15%>
1年後・・・63.0
2年後・・・129.2
10年後・・・792.4
20年後・・・2083.2
29年後・・・2582.8
30年後・・・2246.3

27年間5%複利で順当に積み立てても(+112.6%)、最後の3年間が-15%だと、1%複利と大きくは変わらないパフォーマンスになってしまいます。

以上の例から、積み立て残高が高額となる“積立て終了・取崩し開始の前後の時期”のパフォーマンスが、生涯の運用の成否に決定的な影響を及ぼすということが言えると思います。

The Goal

■最近は、「長期的に株価が低迷し、株価が当初より大幅に下落していても、積立て投資をしていれば利益が出る」といった記事も見受けられます。

こうした記事のデータは、長期的に株価が低迷するが、最後に株価が上昇するパターンになっています。投資残高が積み上がった最後に株価が上昇することになっているのがミソです。

逆パターン(長期的に株価が上昇したが、最後に株価が下落)になった場合は、「長期的に積み立て投資をして、株価は大きく上昇したのに、運用パフォーマンスがよくない」という状況になってしまう可能性があります。

長期積立て投資の根底には、「短期的にはマーケットは下振れることがあるが、長期的には右肩上がりに上昇していくはずだ」という考え方があると思います。

それが正しくて長期的に右肩上がりになったとしても、「短期的な下振れ」が積立て終了前後の時期に訪れた場合は、悲劇となります。それ以降はどんどん取り崩していくため、仮にそれ以降に上昇したとしても、取り戻すことが難しくなってしまいます。

逆に、「短期的な上振れ」が積立て終了前後の数年間に訪れた場合は、大きな成果をあげることができます。

これが、基金の永続性を基本的には前提とする「大学の基金」などとは異なり、個人がいつかは積み立てを終了し、取崩しを開始せざるを得ない点に内包されている制約だと思います。

■以上をまとめると、以下のような結論になると個人的には思います。

「長期積立て投資が上手くいくかは、積立て終了・取崩し開始の前後の数年間のマーケット環境に大きく影響する。そして、そんな先のことは誰にもわからない。」

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    2011.05.08 Sun l 資産運用の考え方 l コメント (4) トラックバック (0) l top
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