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2011年以降のスタンス~日本株(1)

2011年以降のスタンス~日本株(2)

2011年以降のスタンス~新興国株式(1)

2011年以降のスタンス~新興国株式(2)

■本日は先進国株式の約50%を占める米国株式について述べます。

米国経済は、雇用環境と住宅市場の低迷、金融機関の不良債権問題の再燃懸念などが、懸念材料として残っています。

雇用はここ2~3ヶ月は+10万人ほどまで回復してきましたが、+20万人まで回復したとしても、失業率が10%弱から6%以下まで下落するには、3~4年といった期間が必要となっています。

住宅着工件数、販売件数は過去最低水準で低迷しています。ネガティブ・エクイティ(住宅価格-ローン残高<0)、過剰在庫の問題から、当面は調整が続くと予想されています。

ただ、債務返済も進んでおり、住宅ローンを低金利に借り替える動きが活発化しています。家計の債務残高はおおむね過去のトレンド線に向けて回帰しつつあり、返済負担は住宅バブル前の水準まで低下しているようです。バランスシート調整は、改善の傾向となっています。

他方、企業の収益は好調な状況となっています。第3四半期の税引き前利益の絶対額は、2006年のピークあたりまで戻ってきています。

米国の企業収益:利益はV字回復

この「雇用回復なき、企業業績回復」から読み取れるのは、米国企業は、バブル崩壊後、わずか2~3年でリストラを基本的には完了したということです。労働分配率はラディカルに低下して、企業収益はほぼ過去ピークに戻り、勤労者一人当たりのGDP成長率は、過去50年間で最高の水準まで上昇しています。

2011年のS&P500の大雑把な株価レンジを、次の4つのEPSと、5つのPERをかけ合わせたマトリックスで抑えておこうと思います。

EPSのcase(1)・・・2010年末の予想利益(EPS)(83.67)

(2)・・・2010年末の予想EPS(83.67)-10%

(3)・・・2011年末の予想EPS(94.79)

(4)・・・2011年末の予想EPS(94.79)-10%

<S&P500>

PERcase(1)(2)(3)(4)
13.371,1191,0071,2671,141
14.371,2021,0821,3621,226
15.371,2861,1571,4571,311
16.371,3701,2331,5521,397
17.371,4531,3081,6471,482

現在の予想通り、順調に増益を果たし、PERが変化しなかったと仮定すると、1457まで上昇します。ただ、楽観的なような気もします。。

09年初頭のボトムからの企業収益のV字回復は、徹底的なコストカットと政府の経済対策によるところが大きいでしょう。利益マージンの拡大を、今後も持続させることができるのかが焦点か。

仮に2011年末の予想-20%まで利益が落ち込んで、PERが変化しなかったとすると、1029まで下落します。ダウンサイドとしては、この辺りまではあり得るか。

ちなみに以下は1995年以降のS&P500のEPSの推移です。

EPS前年比
199537.7018.7%
199640.637.8%
199744.018.3%
199844.270.6%
199951.6816.7%
200056.138.6%
200138.85-30.8%
200246.0418.5%
200354.6918.8%
200467.6823.8%
200576.4513.0%
200687.7214.7%
200782.54-5.9%
200849.51-40.0%
200956.8614.8%
2010(予)83.6747.2%
2011(予)94.7913.3%

※OPERATING EARNINGS PER SHR(ests are bottom up)から計算

The Goal

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■上表のように、11年は06年のピークを超えて、過去最高益となるのが見込まれています。

しかし、もちろん予想通りに行くわけではなく、予想が外れることは多々あります。私たちに現在、最も問われているのは、今後、以下二つのうちどちらに進むのかという大局的な考えでしょう。

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(1)米国の経済は、住宅・金融バブル崩壊によって07~09年上旬までリセッションに陥ったが、これは「異例」であり、今後は再び平均的な成長を期待できる

(2)米国経済の現在の回復は、国家による経済対策や減税や金融緩和などによる一時的なものであり、遠からずスタミナ切れを余儀なくされ、米国でも1990年以降の日本のように構造変化が発生して、低成長が常態化する。

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(1)であれば、保有株式をホールドするのが正当化され、資産配分を変更する必要も生じません。(2)であれば、株式の売却や、資産配分の変更が選択肢となります。

ちなみに、「相場観を入れた株式購入は投機であり、何も考えずに長期投資するのが投資の王道であり、全く予想をする必要はなく、バイ&ホールドすればよい」という意見もあるかもしれません。

しかし、「長期投資だから、何も考えずに保有する」、「相場観を入れずに、機械的に積み立て投資する」というのは、結果的には(1)の相場観を持っているのと同義です。

最近は「機械的積み立て投資」を提唱する証券会社関係者や評論家、FPなどが増えている印象がありますが、これは「相場観に基づかない投資」というわけではなく、「予め確立させた強固な相場観による投資」です。

すなわち、積み立て投資は、「長い間積み立てたら、最終的にはリスクに見合った大きな利益が出るはずという“強固な相場観”に基づくリスクテイク」であり、ある意味では相場観に基づく投資の一種であることは否定できないと思います。

■私自身は、当面は楽観的ですが、長期的にはニュートラルです。

米国経済をめぐる懸念は山のようにあります。ただ、QE2に象徴される大規模な金融緩和、大規模減税の延長などの経済対策、短期間でリストラを終えて筋肉質になった米国企業の企業業績の堅調さ等に鑑みると、当面は株価は堅調に推移するのではないかと思います。

ただし、米国企業の株価は別として、米ドルが右肩上がりの上昇を続けることはあまり想定しづらい面もあります。

米国は政府債務の上限が14兆3000億ドルと規定されていますが、ブッシュ減税延長により、2011年半ばにはその上限を突破するので、上限引き上げが実施されると思われます。

米国の財政赤字は1兆5000億ドル以上まで膨張すると予測されており、GDP比で10%を超えます。また、ベビーブーマーの退職により高齢層が増加することや、社会保険の拡充などにより、今後の財政状況は更に圧迫される可能性が指摘されています。

有力格付け会社は相次いで、米国債の長期的スパンでの信用懸念に言及し始めています。

日本は95%の国債が国内でファイナンスされていますが、米国は経常収支も赤字であり、米国債の多くは海外によって支えられています。

ガイトナー米財務長官は、「米国がAAAの格付けを失うことは絶対ない」と言いましたが、1971年に、米国が「神との約束」と誓った米ドルと金のペッグ制を放棄したように、自然科学ではない経済事象において、“絶対に覆らない不変的真理”は絶対にありません。

また、竹中正治さんの論説文 に書かれているように、米国の対外資産と対外負債の投資リターン格差(対外資産のリターン>対外負債の利率)は、米国の生命線だと思われます。

この点、米国の対外資産の50%以上は非ドル建てであり、対外負債のほとんどはドル建てなので、ドルの為替レートの上昇(ドル高)は、米国の投資リターンの縮小に直結します。逆にドル安は、米国の投資リターンの拡大に寄与します。

ただ、あまりにドルに対する懸念が高まり、諸外国が米国債離れ・米ドル離れを起こしてしまうと、米国債のファイナンスに悪影響が及び致命的ですので、過度なドル安は望んでいないでしょう。

つまり、米国にとっては、他国のドル離れ・米国債離れが起きない程度に、緩やかにドル安になるのが望ましく、少なくても過度なドル高は望ましくありません。

米国のソブリンリスクのリスク要因は、ドルの為替レートの過度な上昇(過度なドル高)が持続することであり、これがドルの構造的な弱点です。

1~2年スパンでは米国の景気回復基調やQE2の中止などによって、ドルのリバウンドがあるかもしれませんが、デフレ基調(購買力平価では通貨高要因)で経常収支も黒字の日本円以上に、ドルがひたすらに強くなり続けるイメージは、今のところは描けません。

ただ、米国企業の株式については楽観的(バイ&ホールドもOK的な考え)なので、ドルのマイナス面とプラスマイナス相殺でニュートラルというイメージです。

もちろん、あくまで現時点での話であり、今後の日本の財政・インフレ率・生産性・金融政策をめぐる状況などが変化した場合は、この限りではありません。見解が変わった場合は、このブログにその都度アップします。

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    2011.01.13 Thu l 資産運用の考え方 l コメント (3) トラックバック (0) l top
    コメント
    1. なるほど

    >>「長期投資だから、何も考えずに保有する」、「相場観を入れずに、機械的に積み立て投資する」というのは、結果的には(1)の相場観を持っているのと同義です。

    これは卓見ですね。
    2011.01.15 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    4. Re:無題

    >ひでさん

    昔の株式や投信の営業は、デイトレ・スイングトレードや回転売買推奨が目立っていましたが、これはほとんどの人が損して少数の人と業者が儲けますよね。。

    これはほとんどの人に勝てないというのが知れ渡ったのか、最近は金融業界者、FPや評論家などで積み立て投資をやたらに勧める論調が、徐々に目立ってきた印象があります。


    これは、ごく一部の凄腕トレーダー以外では、頻繁な回転売買・デイトレ・スイングトレードよりは、勝率が高いと思います。
    債券100%と比べて上手くいくかどうかは、投資開始の時期と投資終了の時期次第のような気が個人的にはしています。

    もちろん上手くいく可能性も十分あるので、どう考えるかは人それぞれでしょうね。
    2011.01.15 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    5. 無題

    「珍しく主張が合致したので」は、本意ではないので訂正します。(何故こんな表現したのか自分でも疑問です)
    いつも、参考にさせていただいてますので、悪意は全くないです。
    「回転売買よりはマシ」、「投資開始の時期と投資終了の時期次第」、もその通りだと思います。
    ドルコスト平均法がこのような投資の後ろ盾になってるのかも。
    2011.01.16 Sun l まつのすけ. URL l 編集
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