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■円高が進んでおり、このまま円高が進むと輸出企業を中心に業績への影響も懸念されています。そうしたことから、マスコミなどから「為替介入しろ」の大合唱が巻き起こっています。

しかし、為替介入は非常に難しいオペレーションであり、費用対効果や副作用の観点からは、難しい側面があると思います。個人的には、為替介入については、堀古さんと同じ意見です。

口先介入も、非不胎化介入も、為替介入は愚策

東京銀行(現三菱東京UFJ)のドル円為替ディーラーをなさっていた堀古さんがおっしゃるように、為替市場の厚みは強靭であり、ちょっとやそっとの介入では効果がないという意見がプロの間では多い印象があります。

統計物理学・経済物理学の第一人者である高安秀樹氏の著書、「経済物理学の発見」 においても、「1兆円の為替介入を行うと、およそ1時間の間に為替レートが1円程度動く。介入の後は、揺らぎが多少大きくなることを除くと、ほぼ元通りの値動きとなり、介入の効果は一時的でしかない」旨の記述があります。

今は当時と比べて、為替市場の出来高は3倍以上になっているので、介入の効果はより一層少なくなっているでしょう。

中途半端な単独介入では、ヘッジファンドの標的にされる恐れもありますし、日本の輸出企業がこっそり売りをぶつけてくる危険すらあります。

日本が過去に為替介入を行ってきた結果として、現在30兆円の損失が出ています。およそ税収1年弱の損失が出ています。為替介入を行っていなかったら、例えば、今後4年間に渡って、税率を25%OFFにする経済対策を打つこともできました。

為替介入が効果を発揮する場合は、「明らかに円高が行き過ぎている」ということが、マーケット参加者の共通認識になっており、何かのきっかけでドル円が崩れ始めたら、多くの参加者が一斉に逃げる体勢になっている時だと思います。

いわば市場参加者の多くがチキンレースを走っており、トレンドが続いている限りはついていくが、トレンド終焉の気配が見え始めたら、一斉にチキンレースから降りる状況のときです。

このような状況では、トレンド転換のきっかけのイベントして、為替介入が有効であると思います。例えば、1995年の介入です。

この点、今はどうかというと、米国の期待インフレ率は約2%で日本の期待インフレ率は約-1%です。現在の金利は、日本は短期0.1%・長期1.1%であり、米国は短期0.25%・長期2.7%です。

実質金利で言うと、日本は短期1.1%・長期2.1%であり、米国は短期-1.75%・長期0.7%です。実質金利では日本円は高金利通貨であり、金融引き締め的であり、これは短期的な円高要因です。

また、欧米ともに自国の通貨安を志向している状況です。

以上を勘案すると、為替介入が効く局面であるかは、議論があるでしょう。

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■やみくもに介入してしまうと、どういう結果が待っているかというと、日本の30兆円の損失がこの上なく雄弁ですが、他国ではスイスの例が挙げられます。

ギリシャ・ショック以降、ユーロ安の進行により、円、ゴールドと並ぶ安全資産とされているスイスフランが高騰しており、スイスフラン高・ユーロ安が進行しています。

スイスはユーロ圏への輸出が多いため、この状況は今の日本と同じような辛さがあります。

そこで、スイス中央銀行は、昨年から大規模なスイスフラン売り・ユーロ買い介入を繰り返しました。その結果、スイスの外貨準備は1年強で5倍以上に拡大しました。

しかし、スイスの懸命な介入も空しく、ユーロ安・スイスフラン高が進行し、10年1~6月期に1兆円以上の為替損失が発生してしまい、スイスは6月に為替介入休止へと追い込まれました。

スイスフランは、対ユーロで、過去最高値を更新しています。

■私ごときが云々言うのは僭越ですが、趨勢的に実効為替レートや購買力平価が円高方向に切り上がっている以上は、やはり最も重要なのは、現在存在する産業や企業がそのままの形式で生き延びることができるようにする方策ではなく、産業構造を環境に適応して変革し、世界経済の変化に耐久力がある経済にしていくことである気がします。

「生き残るのは最も強い種ではなく、最も上手く環境に適応した種である」旨の言葉があったと思いますが、含蓄のある言葉だと思います。

また、週間エコノミストで、JPモルガン・チェース銀行債券為替調査部長の佐々木融氏は、

「ドル・円市場は巨大で、いかに日本政府といえども操作はできない。また、介入のために市場に出した巨額の円売り注文が一瞬にして消えて行く恐怖を体験したら、この巨大な市場を操作しようとするのは、自然現象に逆らおうとすることとほぼ同義であると誰もが感じるであろう。」

とコメントしています(カッコ内は、週間エコノミストから引用)。

※佐々木氏は、1990年代半ばに日銀で為替介入の担当者として、実際に円売り介入を実行した方です。

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    2010.09.08 Wed l 経済・社会・金融動向 l コメント (5) トラックバック (0) l top
    コメント
    1. 無題

    「現在存在する産業や企業がそのままの形式で生き延びることができるようにする方策ではなく、産業構造を環境に適応して変革し、世界経済の変化に耐久力がある経済にしていくこと」
    →卓見です。
     ただ、よほど腰を据えて言わないと、マスコミから集中砲火を浴びてしまいそう…。
     日本経済のあり方について、経団連の重鎮企業に理解してもらう人間力というか説明力というか粘り強さというか、何と言ったらいいかわかりませんが、そういうのが必要かなあ。
    2010.09.08 Wed l seisakuron. URL l 編集
    2. 無題

    >産業構造を環境に適応して変革し、世界経済の変化に耐久力がある経済にしていくこと

    このような話は円高になる度に聞くのですが、具体的には何をするのでしょうか?
    2010.09.08 Wed l 通りすがり. URL l 編集
    3. 賛成

    ご趣旨に同意です。
    外貨建て資産を買い増ししながら言う台詞ではないですが・・・(^∇^)
    2010.09.09 Thu l まつのすけ. URL l 編集
    5. Re:無題

    >通りすがりさん

    例えば、製造業であれば、海外生産を拡充することが思い浮かびます。今の日産自動車のような方向。

    当然、それに伴い国内での雇用が失われますので、その分の労働力を、例えば医療や介護や農業などの分野に振り分けられればいいかなと。

    後は、グローバル化により、日本人の仕事が海外に流出しているので、新興国には難しいようなことを行う企業を育成すること、端的にはアップルやグーグルのような企業が生まれやすいようなインセンティブを付与しうる法制度や租税制度を整備することでしょうか。
    2010.09.09 Thu l まつのすけ. URL l 編集
    6. Re:賛成

    >mushoku2006さん

    ドルとユーロは大分いい水準まで下落してきましたよね。この2つはほんと弱い状況で、どこまで行くのかなと毎日毎日、朝昼夜とチェックしてます(^^)


    実効為替レートやPPPに照らすと、
    ドル円80円割れ、ユーロ円100円割れはかなりいい水準であり、MMFを買おうかなと思っています。

    しかし、短期的にはどこまでオーバーシュートするかわかりませんよね。。
    2010.09.09 Thu l まつのすけ. URL l 編集
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