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■前回は、日本国債の状況について概観し、日本の財政状態がかなり悪いのは確かですが、国内消化が可能である点や、対外純資産が多く、債務が円建てである点はプラスであることを述べました。

本日は、「結局のところ日本国債は大丈夫なのか?、大丈夫だとしたら今後はどのような指標に注意を払う必要があるか、大丈夫でないならどう行動すればよいか」についてまとめます。

日本国の財政赤字の持続可能性の目安の一つは、「国債の需給バランスが崩れないように、日本国の公債残高が将来的にも増加し続け、発散してしまうことがないか」だと思います。

公債の債務残高の発散を防ぐためには、少なくてもプライマリー・バランス(借入れを除く歳入-過去の借金の元利払いを除いた歳出)が均衡(±0)する必要があります。理想は黒字化です、

プライマリー・バランスが均衡していれば、国の毎年の支出が税収などの毎年の収入でカバーされていることになります。これが達成されている場合、その年の債務の増加は利払い分のみとなり、名目金利と名目GDP成長率が等しければ、公債残高の対GDP比は一定となります。

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■ではこの点について、日本政府の状況を見てみます。特別会計も含めて分析しないといけないのかもしれませんが、そこはブラックボックス的な側面があるため、一般会計を対象とします。

2009年度の税収は37兆円と予測されています。08年度の税収 は約44兆円、07年度は約51兆円、06年度は約49兆円、05年も約49兆円、04年は約46兆円、03年は約43兆円、02年は約44兆円でした。税収の中で法人税や所得税は景気によって変動が大きく、過去8年間は37兆~51兆とバラつきがありました。

09年度は金融危機以来の世界的経済不況が続いて税収が大きく落ち込みましたが、一応これは一時的現象と考えて例外とします。09年度は例外として、現行税制度のもとでは、概ね43~50兆円程度の税収が見込めると考えられるでしょう。また、税収と公社債収入以外に、雑収入的な収入が5~9兆円程度あります。

他方、一般歳出は、09年度は景気対策のための大型補正予算と国債費を除くと約69兆円程度と言われています。08年度は国債費を除くと約65兆円、07年度は約62兆円でした。

まとめると、日本国政府の収入は48~59兆円、支出は概ね62~69兆円と考えられます。年度によって異なりますが、景気がいいとき(07年など)や深刻な金融危機の年度(03年、09年など)を除くと、歳入と歳出の差は、概ね10兆~15兆円程度となっています。

この他に国債費があり、約20兆円です。国債費の内訳は、過去の借金の元金返済分と利息の支払い分がほぼ10兆円ずつとなっています。

利息を支払うために新規国債を発行する状況が続くと、債務の膨張・発散へとつながるので、利息分は税収などの収入で支払う必要があるでしょう。ただ、過去の借金の元金返済分の方は借り換えればよいため、必ず減らす必要がある訳ではないかもしれません(もちろん減らすのが理想です)。

民間企業でも、特に問題がない企業の場合は、貸し剥がしでもない限りは、元金の借り換えに銀行は応じます。現時点では、国債を借り換えることについては問題は生じないと思われます。

まとめると、毎年の歳入不足分(10~15兆円)+国債の利息分(10兆円)の20~25兆円の埋め合わせがつけば、とりあえずは日本の財政が破綻へと向かうのは防止できると思います。

わかりやすくするために、この不足分を全て消費税増税で補うとしましょう。消費税は1%で約2兆円の税収です。20~25兆円は10~12.5%の消費税アップでカバーできます。今の5%を加えると、消費税は15~17.5%となります。

大増税となるわけですが、ヨーロッパ諸国の消費税は15~20%くらいですので、実現不可能ではないかもしれません。少なくても、経済が大混乱するような事態は避けられそうです。

ヨーロッパ諸国は消費税率は高いですが、食料品や医薬品、電力・ガス、国内旅客輸送などの生活必需品は軽減税率が適用されていたり、消費税が免除されていたりします。

例えば、イギリスは17.5%(09年末までは15%)ですが、食料品・国内旅客輸送などは0%です。ドイツは19%に対して7%、フランスは19.6%に対して2.1% or 5.5%です。

日本ではなぜかあまり議論されていませんが、ヨーロッパのように、「食料品・電力・国内旅客輸送などの生活必需品は軽減税率」という方式にすれば、消費税アップの国民的コンセンサスを取りやすいかもしれません。もちろん、線引きが難しいという問題はあるかもしれませんが。

また、インボイス導入など、消費税捕捉強化の策も必要でしょう。


まとめますと、消費税17.5%で財政破綻は防げるという結論になりました。この点、OECDの試算をみてみると、「日本が2020年前後までプライマリーバランスの均衡を果たそうとすると、消費税10%への改定と14兆円の歳出カットが必要」と計算されています。

14兆は消費税にすると7%ですので、17%でOKということになります。私の計算と概ね合っています。

もちろん、今後は少子高齢化などによる歳入減・歳出増などの影響も考慮する必要がありますし、経済の低迷が続き、税収の減少が続く状況になる可能性もゼロではありません。したがって、未来永劫これで大丈夫というわけではありませんが、とりあえず当面は問題ないでしょう。

また、ここでは負担感をわかりやすくするために消費税のみで計算しましたが、もちろん全て消費税で賄う必要はありません。

財政状態の悪化を防ぐためには、大きく分けると、(1)歳出削減、(2)経済成長で税収増加、(3)増税、の3つの方法があります。実際には、消費税以外の増税や、経済成長による税収の増加、歳出削減なども組み合わせていくことになるでしょう。



■結論が出ました。日本の財政は厳しい状況ですが、それでもなお今のところは「持続可能」だと思います。

やはり、円安になるどころか円高一直線であり、インフレが進むどころかデフレ一直線であり、金利が上昇するどころか長期金利は世界屈指の低金利である現状が、日本国債と円に対する持続可能性を物語っていると思いました。

私が見落としている事実があったり、誤解があるかもしれませんが、OECDの見解とほぼ同じであるため、それ程ずれていないと思います。

ただ、もちろん未来永劫大丈夫というわけではありませんので、継続的なトレースが必要となるでしょう。では、今後はどのような指標に注目していく必要があるのか。結論から言うと、以下の3点だと思います。

(1)国債の消化状況を見て、外資の流入が生命線になっていないかをチェック
(2)経常収支の赤字が続くか
(3)大幅な円安、大きな金利上昇、高インフレが進行するか

(1)国債の消化状況
アルゼンチンのように、深刻な経済危機に陥ったり、財政破綻した国は、国債の消化の大きな割合を外国人に依存しており、外資の流入が資金繰りの生命線でした。外国からの資金流入に頼った経済運営の場合、これが途絶えると経済が大きな困難に陥ることがあります。 国債の消化状況をトレースする必要があるでしょう。

また、円建てでの国債消化が難しくなり、外貨建て国債が増加してくると、昨日述べたような円安による債務膨張・通貨危機の危険が高まります。この点も注意。日本の財政不安により、日本の金利が諸外国より高くなってきたら、企業の外貨建て社債が増加したり、個人の外貨建て住宅ローンが広がったりするかもしれません。こうした兆候は要注意かもしれません。


(2)経常収支
マクロ的には、経常収支は日本居住者の「貯蓄-投資」です。経常収支が黒字である限りは、フローのベースで貯蓄超過であり、外国人の日本への投資よりも日本人の対外投資の方が多いため、日本国内のマネーフローに余裕があることになります。

ストックのベースでは、前回述べたように、長年の経常黒字により日本の対外純資産が200兆円以上積みあがっており、これは財政赤字の数年分に相当します。

したがって、日本の資金繰りが危機的状況に陥るまでには、経常収支が趨勢的に赤字の時期が続くはずであり、経常収支が黒字の間は比較的安心できます。


(3)為替レート・金利・インフレ
余談ですが、インフレには良いインフレと悪いインフレがあります。

「良いインフレ」とは、実需の資金需要が供給を上回り、緩やかに物価が上昇していくケース。このタイプは、発生しても、一般的な金融政策でコントロールできることが多いので、大きな問題ではありません。 また、このタイプのインフレは、概ね個人向け国債(変動金利型)か高金利銀行の1年定期預金でヘッジできるので、資産運用の観点からも問題ないと思います。

これに対して、「悪いインフレ」とは、財政赤字の持続可能性への懸念などから、内外の資金で国債を消化することが難しくなり、財政破綻の懸念から金利上昇が発生し、それを日銀が引き受けてインフレが発生するケースです。

一般的には、金利の上昇は、短期的には為替レートの上昇要因と考えられますが、この悪い金利上昇のケースでは、日本の信用が悪化するので、円安が進行する可能性が高いです。円安が進んだ場合、これもインフレ要因になり、それがさらに高金利を呼ぶという「インフレ・円安・金利上昇スパイラル」に陥る恐れがあります。

また、国内勢が海外投資を増加させることによって、日本国政府の財政赤字のファイナンスが難しくなる可能性も理論上はあり得ます。このような場合は、日本の金利が上昇し、為替レートは大きく円安になると思われます。

日本の金利が海外の国よりも高くなったにもかかわらず、為替レートが大幅に円安になり、円安をストップさせるための政府介入が行われるような事態になった場合には、日本国債と円建て資産の先行きについて考えることが必要でしょう。



■山崎元さんが、インフレと資産運用に関するコラムを書いています。まさにその通りだと思います。

インフレのリスクとお金の運用

以下、上記コラムから引用
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少し見方を変えてみよう。インフレに対するリスクはもちろん考えなくてはいけないが、過剰に恐れる必要はないのではないか。たとえば、マイナス1%のデフレが、いきなり翌年プラス10%のインフレになるということは滅多にない。変化が徐々に起きるなら、対応は変化が起き始めてからでいいかも知れないし、変化が起きる前に過剰な対応をするとかえって損かも知れない。

(中略)

先にも述べたように、デフレがいきなり二桁%の大幅なインフレになることはないが、インフレ率がある程度以上に上昇してきた場合には、金融資産を実物に替えたり、外国に資産を逃避したりする必要が生じる場合があるだろう。

現在の日銀の物価に対する認識は0%~2%のわずかなプラスの物価上昇が望ましいということのようだ。この目標に対して、年率4、5%の物価上昇が発生するようになったら、これは、日本の物価がコントロールを失いつつある状況だと考えてもいいだろう。こうした物価上昇を抑えるためにはかなりの金利上昇を伴う金融引き締めを行わざるを得ず、その際に日本の株価や不動産の価格にも悪影響が出るだろうから、海外資産を増やすのは理にかなっている。

日本の物価上昇に歯止めが掛からないと目される場合には、円の為替レートが相当に円安に振れる公算が大きい。深く考えた数字ではないが、1年間に4%の物価上昇と15%以上の円安が同時に起こった場合には、日本の金融資産に対する警戒モードに入るということでどうだろうか。

ただし、金利が相当に上昇してインフレに収束の気配が出てきた場合は、日本の長期債券が格好の買い場になる。これも、将来もしも起こることがあれば、生涯に何度もない大儲けが狙えるチャンスというべきパターンの一つなので付け加えておく(現実に役には立って欲しくないが、長い間にはそのようなこともあるだろう)。
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以上、日本国債の状況についてまとめました。今のところは、枕を高くして日本国債並びに円建て資産を保持します。

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    2010.02.26 Fri l 資産運用の考え方 l コメント (4) トラックバック (0) l top
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