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■先日は、JPモルガンがAAA債券の暴落を予測し、業界地位低下という痛みを覚悟してサブプライム関連の資産を2006年10月2週に処分し、金融危機のダメージを最小限に抑えたことについて述べました

「日本国債のデフォルト」という、JPモルガンと同じくらい傷みを伴い「本当に起こるの?」というシナリオを検討したいと思います。財政危機や日本破綻、ハイパーインフレ発生といった言説が、21世紀に入って度々登場しています。本当に財政破綻が迫った危機的状況であれば準備が必要ですし、問題がないようであれば、余計な心配をせずに日本国債と円建て資産を保持すればいい。

「実際は日本国政府の財政状況はどうなのか、本当に危機的状況なのか、国債デフォルト・通貨危機に陥る可能性はどの程度あるのか、どの指標に注目してどういう場合にどのような行動をとるべきか」をはっきりさせようと思いました。本日は、日本の財政や国債をめぐる状況や、日本の債務について一般的に述べられている話についてまとめたいと思います。

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<格付け機関・マーケットの評価>
S&Pは、先月末に日本の長期国債格付けのアウトルックを安定的からネガティブに変更しました。

「日本の一般政府債務残高の対GDP比率は2010年3月末時点で100%に達する見込みであり、最も債務の負担が重いグループに属している」とされています。他方、高水準の対外純資産残高、準備通貨としての円の地位、世界的な金融危機に対する耐性を示した金融セクター、多様化された経済などの強みがあるため、たとえ財政再建がさらに遅れて格下げとなった場合でもAA格にとどまる見通しとされています。

ただ、格付け機関が信用できるのかという問題はあります。


<国債の国内消化>

現在、日本の長期金利が低いのは、国債の国内消化ができているため(国債の国内における需要が豊富なため)だと思われます。約94%が国内消化です。 その主たる買い手は国内の銀行・保険会社・政府系金融機関などです。邦銀の資金繰りが回る限りは、国債の価格は維持できます(金利は上昇しない)。

海外勢にとって、財政不安を抱える国家の債券に積極的に投資するインセンティブはないため、海外勢は国内勢よりも高いリスク・プレミアムを要求するでしょう。「いつまで国内消化が可能か」は大きな注目点。

現在、日本国債の利率は非常に低くて国債の価格が高くなっている状態であり、利率の低下余地は限られており、将来の見通しとしては、利率の上昇の可能性が高いです。つまり、国債価格はこれ以上に上昇するのは考えづらく、将来下落する可能性が高いと思います。


いよいよ日本国債に対する懸念が深刻化し、国債の値崩れ(金利上昇)が進むと、民間金融機関が国債購入を中止したり、売却に転換することも考えられます。そうなると、一日でも早く売った方が損失を抑えられるため、「売りが売りを呼ぶ事態」になる可能性もゼロではないでしょう。

やがて財政赤字が限界に達すると、政府の借金を返すために借金せざるを得なくなり、しかも日本国政府の信用が失われているため金利もどんどん上昇し、借金が膨張してしまいます。

こうなってくると、日本政府側では、(1)日銀の国債の直接引受、(2)日本郵政への日銀貸出&日本郵政の国債引受、(3)民間金融機関へ国債購入の強制、(4)政府紙幣発行、などの政策を講じるものと思います。

しかし、ここまで事態が進行してしまうと、やがて日銀もコントロールできなくなり、ハイパーインフレまで進んでしまう懸念もあります。これはインフレを使った借金棒引きを意味します。マクロ的には、金融資産超の企業部門と個人部門から、負債超の公共部門へ資産が強制移転することになります。

国内の主要機関投資家が本当に動揺するような事態があるかどうかがキーポイント。


<日本国の債務の絶対額>
日本国の公的債務は、GDP比約200%近くまで(ちなみにギリシャは約135%)達しており、政府債務残高の名目GDP比は、ギリシャを余裕で上回り圧倒的な世界一です。日本史上は戦時中に匹敵する状況となってます。


日本の財政赤字の対GDP比は、過去10年間は約-4%~-10%で推移。2009年度は、スペインやギリシャとほぼ互角の状態です。国+地方の政府部門の資産から負債をマイナスした「正味資産」は、2009年末にマイナスに転落したようです。

同じような指標では、純債務(債務残高-金融資産)のGDPに対する比率があります。純債務上は余裕があるという意見がありましたが、それは過去の話です。OECDによると、2010年末の比率は約105%となり、イタリアを上回り、先進国で最下位となります。IMFの試算でも、純債務が先進国最悪まで悪化し、GDPの100%を超えるとされています。

これ程までに巨額の債務を平時に積み上げた国は他にありません。しかし、それでも現時点では日本国債は非常に低利率です。結局のところ、純債務の絶対額が大きくても、それがファイナンスできれば問題はないということでしょう。つまり、最大の問題は債務が市場で消化できる額であるかであり、これについては、IMFによるとまだ余裕があるようです。


<対外債務・対外資産>
日本政府は債務の絶対額は大きいですが、対外債務は少なく、対外債権は大きく積みあがっています。債務のほとんどは円建てです。

日本は経常黒字が続いています。長年に渡って貿易黒字を継続させてきたことにより、対外資産が大きく積みあがっています。そして、大きく積みあがった対外資産からの金利収入や配当収入が増えています(所得収支のプラス要素)。逆に、アメリカのような経常赤字国は、対外債務がどんどん積み上がっていくことになります。

日本の経常収支と所得収支は、趨勢的には上昇基調にあり、日本の対外純資産は200兆円を超えています。S&Pでは、経常黒字が続いていることから、対外純資産は今後数年でさらに増加すると予測されています。日本の2009年末の対外純資産残高は、概算で経常取引受取額の309%と世界最大となっています。

日本の対外債務が少ないこと(海外に借金していないこと)、債務のほとんどが円建てであることは大きなプラス材料です。中小国や発展途上国の場合、自国通貨に対する対外的信頼が乏しいので、対外負債は外貨建て(ドルやユーロなど)とならざるを得ません。したがって、途上国の場合、対外負債が積みあがった後に、自国通貨の為替レートが下落すると、自国通貨換算で負債が膨張がします。アルゼンチンでは、これが起こりました。

※補足
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例えば、1ドル100円で、10ドルの借金をしたとします(1000円)。これが円安になり1ドル200円になると、円換算後の借金は2000円に増えます。外貨建て債務がある場合、円安になると債務が増えることになります。
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2000年代初頭のアルゼンチンでは、経済規模に比べた対外債務が大きく、外貨建て債務が多い状況でした。この状態で経済低迷、経常赤字の拡大、対外債務の拡大、財政悪化などが進み、財政破綻懸念から対外借入れ金利水準が高騰し、利払いのために更に債務を拡大させるという債務膨張スパイラルに陥り、デフォルトへと追い込まれました。

経済低迷、経常赤字の拡大、対外債務の拡大、財政悪化などにより、海外投資家がその国の財政の持続可能性に疑念を持つようになると、資本収支黒字の減少(海外からの流入資金の減少)&経常収支赤字の縮小というメカニズムが働くと思われます。

この過程で、当該国の通貨の為替レートは下落します。海外からの資金流入の減少と為替レートの下落圧力の影響から、国内金利も上昇します。アルゼンチンなど財政破綻に陥った国は、対外債務は外貨建てが多く、対外債務で膨大な為替損失が生じて、債務が膨張して国内経済は大きく落ち込み、信用危機・金融危機に発展しました。

外貨建て債務の膨張が、「自国通貨の為替レートの下落→膨大な為替損失→企業・金融機関破綻、政府債務の膨張→信用不安により更なる通貨安→更なる債務膨張・・・」というクライシス・スパイラルを生み出しました。この点、日本の場合、国の債務は概ね円建てなので、通貨危機は起こりにくい状況となっています。


■以上、一般的に議論されている話をまとめると、以下のようになります。

(1)S&Pによると、日本国債の格下げがあってもAA-までとされており、現時点ではデフォルトへの警戒心が薄い。ただ、格付け機関が信用できるのかという問題は残ります。
(2)国債の国内消化が出来る限りは問題なさそう。ただ、値崩れ(金利上昇)が加速してくると、売り浴びせられて暴落する可能性も否定できない。
(3)日本の公的債務残高、正味資産、純債務は先進国最悪の水準
(4)対外債務が円建てで、対外純資産が多いのは大きなプラス材料
(5)結局のところ、純債務の絶対額が大きくても、それがファイナンスできれば問題はない。最大の問題は債務が市場で消化できるか否か。

こうしてみると、財政状態が悪いのは確かですが、国内消化が可能である点、対外純資産が多く、債務が円建てである点はプラス材料であり、「結局のところどうなの?」という点ははっきりしません。やはり歳入と歳出、国債の利払いの状況などのデータを見て、プライマリーバランスの均衡の達成が可能であるかを分析する必要があると思いました。それは次回に。

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    2010.02.24 Wed l 資産運用の考え方 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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