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前回 は、会社員の視点から企業年金について述べました。今日は企業経営者と投資家の視点について述べたいと思います。

■企業経営者

企業経営者の立場からすると、高い利回りの確定給付の企業年金は、非常に負荷が高い制度でしょう。1990年代末には、予定利率と実際の利回りの逆ザヤに耐え切れなくなり、多くの生保が破綻しましたが、企業年金も同じような構図があると思われます。

企業年金は、企業の金融子会社的な性質が強いです。本業とは全く無関係の資産運用次第で、多額の積立金不足が発生することは、経営サイドからすると、望ましい姿ではないと考えるかもしれません。

JAL以外にも、年金の積み立て不足を抱えている企業が多いです。積み立て不足は、現在の会計基準では一定期間内で、営業費用などとして処理する必要があり、中長期的に利益を減少させる効果があり、自己資本を目減りさせます。

大企業で、自己資本と比較して、年金の積み立て不足が多い企業は、以下の通りです。

 積立不足額/自己資本(%)積立不足額(億)
JAL189.8%3314.7
東芝121.8%5446.8
三洋電機110.6%1619.1
富士電機HD86.7%1130.1

※09年6月期の実績

09年6月期のデータでは、JAL、東芝、三洋電機は、企業年金の積立不足額を一括処理したら、自己資本が全て吹き飛び債務超過に陥る状況でした。完全時価会計では、実質債務超過でした。

本業で1円でも多くコストをカットし、1円でも多く売上を伸ばすように懸命な企業努力をしても、本業とは全く無関係の株価下落で、それらの企業努力が吹き飛んでしまうことになっています。

このように企業年金は業績や財務内容に大きな影響を及ぼすため、JALのような深刻な経営状態ではない企業であっても、厚生年金基金を脱退して、確定拠出年金へと移行する企業が多いようです。

例えば、ユニクロで有名なファーストリテイリングは、2002年に確定拠出年金へと移行しており、財務の大きなネックの一つは解消しています。

そもそも論として、企業が企業年金という制度を維持していたのも、前回述べたように、予定利率と国内債券の利息の差額をピンハネするのが主な動機だったような気がします。それができなくなった現在、確定給付型の企業年金はやめ、確定拠出年金へと移行したいという経営者が多いと思われます。

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■投資家

投資家の立場に立つと、確定給付型の企業年金は、企業が金融子会社を抱えているようなものです。現在の状況では、高利回りの確定年金を売りまくってしまって、多額の逆ザヤがある生保を抱えているようなものでしょう。

企業への株式投資として考えると、株式に劣悪な高コスト投信がセットでついてくるようなものと表現できるかもしれません。やはり企業の魅力を削ぎます。

機関投資家の一部では、株式投資にあたり、企業の年金積立不足額を考慮しているところもあるそうです。

■以上、会社員、経営者、投資家から見た企業年金の一般論を述べました。

それぞれの立場により、見方が変わってくると思いますが、現在の法制度は概ね妥当だとも考えられます。

現在の法制度では、形式的には、企業年金は簡単には減額できず、OBの2/3や労組との合意があり、厚労省の認可が必要です。

厚労省の不認可に対して、企業側が提訴したケースでは、裁判所の判決では、NTTのように毎年黒字を維持しており、経営上の問題は少ないにもかかわらず、企業年金を削減しようとしているケースでは、否決されています。

他方、年金減額の決定に対して、受給者側が提訴したケースでは、りそな銀行のように、破綻寸前に追い込まれ、公的資金を注入された企業は、企業年金の削減が認められています。

この判例は、概ねバランスが取れているという印象もあり、この枠組みを今後も維持して行きばいいとも思われますが、そうも言ってられなくなる可能性があります。国際会計基準(IFRS)の上場企業への強制適用がほぼ確実となっています。

来週は、IFRS導入が企業年金にどう影響するのかについて、簡単にまとめたいと思います。

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    2010.01.15 Fri l 経済・社会・金融動向 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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