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昨日 は、公的年金について、厚労省の公約の前提条件に無理があること、無理をして築いた公約にも裏があることについて述べました。今日はその続きです。


■どんぶり勘定の中で、厚生年金(サラリーマン)の負担が増加

東洋経済の記事では、「国民年金も厚生年金も、各々の制度から拠出している基礎年金部分への負担は同じ。したがって、国民年金の未納者が増加しても、厚生年金が、国民年金の穴埋めをしているという説は大ウソ」旨の記載があります。

しかし、これは誤りかと思います。

以下、社会保険庁のWebサイト から引用
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基礎年金拠出金(この節で以下「拠出金」という)とは、基礎年金の給付に要する費用に充てるため、公的年金制度の保険者(国民年金・厚生年金保険の保険者である政府及び年金保険者である共済組合)が毎年度負担する拠出金のことです。(法94の2)

この拠出金の額は、第1号被保険者については保険料を納付した者の総月数、第2号被保険者及び第3号被保険者については、各被用者年金制度ごとにその制度の第2号被保険者(20歳以上60歳未満)の総月数及び第3号被保険者の総月数に応じて算出されます。(法94の3)(令11の2、同11の3)
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引用終了

以下、わかりやすく述べたいと思います。

国民年金(全国民の年金の共通部分)はいわゆる賦課型ですので、基本的にその年に支払われた保険料が年金の原資となります。

つまり、国民年金保険料と厚生年金・共済年金保険料の一部が基礎年金に充当されます。ここで、各年金が基礎年金のために拠出する資金が「基礎年金拠出金」です。

基礎年金制度というのは、実は必要な支給額を計算して、その負担額を、財政 (国庫)と、国民年金、厚生年金、共済年金に割り振るという制度です。

その計算方法は、概ね以下の通りです。

①基礎年金の給付に必要な費用の総額を計算
②その2分の1を国庫負担とします。
③残りの金額を、自営業者、サラリーマンで人数割りして、国民年金および厚生年金・共済組合それぞれの負担額(基礎年金拠出金)を決めます。

このときに、第1号被保険者のうち、保険料を免除されている人(免除者)と払っていない人(未納者)は人数から除外して計算されます。

その年に支払われた保険料で、その年の給付金額を賄えない場合は、積立金を取り崩すことになります。


■この巨大などんぶり勘定的な運用からは、以下2点の問題が生じます。

①国民年金の未納者が増えると、その負担は厚生年金にしわ寄せされます。

すなわち、国民年金、厚生年金・共済年金の拠出金は人数割りで計算され、その計算の際は未納者は除外されるので、未納者が増えれば増えるほど、国民年金の負担割合は減少し、厚生年金の負担割合が増加します。

何かを勘違いしているのか、確信犯なのかわかりませんが、東洋経済の記事は間違っていると思います。

②国民年金の保険料は定額で、厚生年金保険料は報酬比例であるのに、基礎年金は人数割りの「割り勘」となってしまいます・・・。

年収2000万の開業医でも、保険料は月14,660円ですが、サラリーマンだと、年収480万(月40万×12)で月32,193円であり、企業負担分を含めると、64,386円です。

サラリーマンが過大に負担している報酬比例の部分を将来確実にもらえるのであれば問題ありませんが、上記のようなどんぶり勘定となっており、それは保障されていません。

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■税方式へ移行すると、消費税増税が必須となり、負担は増加するって本当?

東洋経済の記事では、「年金を税方式へ移行すると、消費税の増税が必要となり、かえって家計の負担は増える。」という厚労省の試算を全面的に押し出し、経団連や日経、連合、経済学者を批判しています。

東洋経済(と厚労省)によると、年金を税方式へ移行すると、下表の%の消費増税が必要になるようです。

 ケース①ケース②
2009年度3.5%5.0%
2025年度3.5%5.0%
2050年度6.0%7.0%


※ケース①=過去の保険料未納期間に応じて、基礎年金を減額するケース
ケース②=過去の保険料未納者に対しても、満額の基礎年金を支給するケース

厚労省の役人は自分の仕事と給料、省益を維持したいため、徹底的に抗戦するはずです。賃金上昇率を2.5%、運用利回りを4.1%と設定することからも明らかなように、彼らの出してくるデータは全く信用置けません。

この増税額も誇張されている感がありますが、とりあえずそれが正しいという前提で、本当に家計の負担が増えるのか考えてみたいと思います。最も消費増税の幅が大きくなる、過去の保険料未納者に対しても満額の基礎年金を支給する場合で検討します。

厚労省の試算は、サラリーマンと自営業者を一緒くたにして負担増と言っているので、就業形態別に細分化して検討します。

<サラリーマン>
①年収240万(月20万×12)のサラリーマンだと、保険料は月12,563円(※2017年まで段階的に増加)です。月収20万のうち、租税・社会保険料・通勤交通費を除くと、手取りは15万ほどですかね?月12万使うと仮定します。

②年収480万(月40万×12)だと、保険料は月32,193円。月25万円使うと仮定。
③年収960万(月80万×12)だと、保険料は月48,682円。月40万円使うと仮定。
④年収1440万(月120万×12)だと、保険料は月48,682円。月60万円使うと仮定。

この場合、消費税負担の増加額は、以下の通りとなります。

 
2009年度6,000 12,500 20,000 30,000
2025年度6,000 12,500 20,000 30,000
2050年度8,400 17,500 28,000 42,000
保険料12,563 32,193 48,682 48,682


ざっくり計算したら、あらゆる年収の世帯で、現行制度の保険料の負担よりも、消費税の増税額の方が低くなりました。しかも、上の保険料は2009年時点のものですが、実際の保険料は2017年まで段階的に増額されます。また、企業負担分を含めると、保険料はこの2倍です。

※月に695,458円以上消費する家庭では、現行の保険料負担の方が軽いです。

上記の増税額は基礎年金部分であり、報酬比例部分がどうなるかは、論点として残ります。しかし、以下2つの理由から、税方式の方が負担が過度に増えることはない気がします。

①現行制度では、報酬比例部分の需給は補償されていない。

②上記のケース①(年収240万)の人は、報酬比例はなく、ほぼ基礎年金のみとなります。その人が、税方式の方が負担が軽くなる公算が大きい。

あれ??

「税方式へ移行=企業負担軽減&家庭負担増加、特に低所得者は負担増」というイメージがあったので、意外な結果でした。それだけ、現行制度では、サラリーマンが割高な保険料を負担していると言うことでしょう。


<自営業者>
次に、国民年金加入者(自営業者・医者・弁護士・税理士など)の場合を計算します。国民年金加入の場合、保険料は一律14,660円(段階的に増加し、2017年は16,900円)です。

①年収240万、月12万消費
②年収480万、月25万円消費
③年収960万、月40万円消費
④年収1440万、月60万円消費

 
2009年度6,000 12,500 20,000 30,000
2025年度6,000 12,500 20,000 30,000
2050年度8,400 17,500 28,000 42,000
保険料14,660 14,660 14,660 14,660

自営業者の場合は、低所得の方以外は、税方式へ移行すると不利になりますね。特に消費が多い富裕層になればなるほど、負担が増加します。


<引退層・免除者>
引退層・保険料負担免除者は、現在は保険料負担がないので、言うまでもなく税方式になると負担増となります。

①月12万消費
②月25万円消費
③月40万円消費

 
2009年度6,000 12,500 20,000
2025年度6,000 12,500 20,000
2050年度8,400 17,500 28,000
保険料0 0 0


<結論>
簡単な計算では、消費税方式へ移行すると、企業は確実に負担減となり、サラリーマンは負担減となる可能性があり、自営業者・開業医・弁護士・税理士、引退層・免除者などは負担増となりました。

意外なことに、低所得者は税方式の方が負担が小さく、多額の消費をする富裕層になればなる程、負担が増えます。

宿敵同士である経団連(企業経営者)と連合(労組)が、年金問題に関しては意見を一致させて共闘を張っているのは、やはり偶然ではないようです。

消費増税=逆進性のイメージが強いですが、低所得だと消費金額も低くなるので、年金保険料負担をなくして消費税に振り返る場合には、一概に低所得者に負担増とはいえないようです。

現行の租税・社会保険制度においては、サラリーマンは「何も文句を言わずに収めてくれて、非常に取りやすい」ことから過大負担となっており、自営業者は「所得補足が難しい」という理由で、節税対策を駆使すると、軽い負担となっています。サラリーマン法人化などの考え方もこの点から出ていますね。

昨日も述べましたが、サラリーマンは、割高な租税・社会保険料を納付して日本国と高齢者を支えており、大きな社会貢献・愛国的献身をしていると思います。誇りに思っていいでしょう。


■東洋経済の記事は、元官僚が書いたのか?

東洋経済の記事の要約は、「年金制度が破綻するというのは大嘘。だから現行制度でいい」です。元官僚が書いたのか?と思ってしまうほど、厚労省擁護、日経・経団連・連合・経済学者批判が痛烈です。

確かに東洋経済の主張どおり、現行の年金制度は、ある年の年金給付は、その年に納付された保険料収入で賄われる賦課方式である以上、給付水準の減額と保険料の増額さえ行えば、破綻することはあり得ません。

しかし、だからといって「破綻しないからこのままでいい」訳はないでしょう。

昨今の年金問題の元凶は、公務員がおぞましいほど非効率・無責任な方法で年金制度を管理・運用することにあると思いますので、社会保険方式を維持するにせよ、税方式へ移行するにせよ、この点の改善はお願いしたいと思います。

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    2009.11.04 Wed l 家計・公的年金・社会保険 l コメント (0) トラックバック (0) l top
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