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自動車保険の落とし穴 (朝日新書) という本を読みました。

数年前には、保険会社の不払い問題 が社会問題化しました。損保においては、2007年7月に最後に完了した調査では、約50万件・約380億円という数字でした。これは02年4月から05年6月までのわずか3年3ヶ月間の話です。

しかし、不払い問題は特約がらみが中心であり、自動車保険については、それ程深刻な問題は少なかったようです。本当に怖いのは、自動車事故や被害にあったときの損保の払い渋り。

本書では、損保が事故の損害額を査定する際、一方的理由をたてて保険金の支払いを拒否したり、保険金を減額したりする姿が生々しく書かれています。

事故の被害者や契約者が、そのような損保の実態を知らずに安易に示談に応じてしまうケースが多いそうです。

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■一般論として、保険会社には、生命保険会社と損害保険会社がありますが、個人の立場からみると、生命保険と損害保険では大きな違いがあると思います。

損害保険では、保険金の支払いに当たって査定や示談が必要となります。

生命保険の場合、死亡という事実は否定しようがなく、また予め保険金の金額は決まっているので、保険金支払いのトラブルは多くないと言われています。それでも何十万件、数百億円という不払いがありましたが・・・。

他方、損害保険では、予め金額が確定していません。車両保険の場合、車の時価が問題になります。交通事故の被害に遭った場合は、被害額の算定が論点となります。

この査定においては、損害保険会社と契約者の利害は真っ向から衝突します。損保は査定価格を抑えれば抑えるほど、自社の利益になります。したがって、損保は低い査定額を提示するインセンティブがあるので、当初は低い査定額を出してくる可能性が高いという話をよく聞きます。

交通事故の被害に遭った場合は、加害者の代理人である損保と示談交渉をすることになります。示談では、損保は必ず安い金額から交渉を始めるという話を聞いたことがありました。被害者が無知で安易に妥協してくれたらラッキーだからという理由です

示談交渉人は、賠償額を安く抑えれば抑えるほど、給料が上昇する報酬体系で働いていると言われています。契約者が粘り越しで交渉すると、損保の内規で定められた査定価格の上限までは上がる可能性があるというう話を聞いたこともあります。

交通事故の示談では、徹底的に相場を調べて、相場より低い額で安易に妥協しないように心がけるのが大事であり、交渉を面倒がって、相手に言われるままの金額を受け入れるのはリスキーだと思っていました。

■同書では、やはりこのようなことが裏付けられています。例えば、以下のような事例が紹介されています。

(1)被害者の過失はゼロという案件にもかかわらず、被害者に対して過失を押し付けようとする損保側に都合がいい判例を持ってきて、「こういう交差点で起こった事故の基本過失割合は7対3ですので・・・」などと交渉を始めるケースがある。

(2) 後遺障害が残るケースでは、介護費用の認定を少しでも低く抑えようとする。

(3)生存余命を短く見積もったり、例えば、「20歳の寝たきり者の年間死亡率は約10%なので平均生存余命は10年」など、介護費用や逸失利益を大幅に減額する主張をしてくる。

損保側が極めて低い金額を主張してきたが、裁判等で大幅増額が認められたケースも載っていました。

・0円(損保提示)→約6000万円(訴訟前に和解)
・1100万円(損保提示)→6600万円(地裁にて和解)
・1億2600万円(紛争処理センター)→2億4300万(東京高裁)
・0円(損保提示)→約5900万円(東京高裁)
・随意介護で日額3000円(損保主張)→日額1万円×365日×余命年数(横浜地裁)

本当かどうかはわかりませんが、元損保社員のコメントや、大手損保会社の査定部門で使用されている示談交渉の裏マニュアルも載っていました。でも本当っぽいです。。

以下、自動車保険の落とし穴 (朝日新書) の内容を引用(要約)
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※元損保社員の話

「損保会社がやっている示談交渉サービスには、真実追及とか原因究明なんて高尚な理念はありません。ひと言で言うなら、いかに会社側の損害を抑えられるかってことですね。

はっきり言って、示談額の2割、3割引きは当たり前。カメラの安売り店みたいなものです。

当事者の出方と、こちらの担当者の裁量次第でどうにでもなる。要するに、駆け引きなんです。

ところが大半の事故の当事者は、保険会社が真実を探して、適正に納得のいく処理をしてくれると信じている。そこに大きなギャップがあると思いますね」

ゴネる相手には、「どうぞ裁判でも何でもやってください」ときっぱり言い渡す。大半の人は裁判を起こしてこない。

※大手損保会社の査定部門で使用されている示談交渉の裏マニュアル

・加害者の信号無視が明らかであっても、損保に都合のいい判例タイムスの記事を提示し、5対5を主張してみる。

・法律にないことを主張し、被害者と加害者を置き換える。

・同じことを何回でも繰り返す。反応がない場合は、時間をかけて怒らせる。被害者が感情的になり、不穏当な発言をした場合は、すかさずメモし、殴りかかる被害者がいれば「刑事事件として訴えますよ」とやんわり脅しをかける。

・言葉遣いはソフトに、どうやって被害者を諦めさせるかだけを考える。われわれはこれが仕事であるので何時間でも粘れる。時間との勝負であり、どこかで被害者が諦めるのを待つか、過失を認めるかである。
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引用終了

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■「生命保険は入口が厳しく(加入が厳しい)、損害保険は出口が厳しい(支払が厳しい)」という話をよく聞きますが、その通りですね。

私は損保を批判しているわけではありません。損保は営利企業であり、1円でも多く稼ぐのが損保の社員に課せられています。被害額を抑えれば抑えるほど自分の評価と報酬がアップするため、彼らの立場からすると当然の行為でしょう。

一個人として大事なのは、損保のそのような行動原理をよく認識しておき、万一自動車事故が発生して、損保側が倫理的におかしい不当な主張をしてきた場合は、法的措置も辞さずに断固として戦う決意だと思いました。

こちらも知識をつけて理論武装する必要があるでしょう。損保は査定額を徹底的に抑えてきます。特に支払いが自賠責を超えて任意保険に食い込むことがないようにしてきます。事故が大きくなる程、損害額が大きくなる程、損保の査定も厳しくなってくるでしょう。

交渉や訴訟を面倒くさがって安易に妥協すると、取り返しのつかないことにもなりかねません。現実として、損保が0円を主張してきたが6000万となったり、1100万が6600万になったり、1億円が2億円になったりするケースがあります。

■重要なのは、以下2点でしょう。

(1)証拠の保全
(2)弁護士の選定

車を運転するのであれば、ドライブレコーダーなどを装着した方が無難かもしれません。写真やビデオなどの映像が大事。事故現場や相手の車、自分の車などについて、ありとあらゆる角度から何枚もとった方がいいかもしれません。

また、弁護士の選定も極めて重要。弁護士の能力や経験は本当にピンキリです。損保側の顧問弁護士は能力が高く、毎日毎日朝から晩まで自動車事故の訴訟を担当している海千山千・百戦錬磨の強者でしょう。そのような損保側の弁護士と対等に戦うには、こちらも自動車事故について経験と知識が豊富で、能力が高い弁護士を雇わないと、勝てる訴訟も勝てなくなってしまうでしょう。

とはいえ、一個人にできることは多くありません。優秀な弁護士をどうやって探せばいいかわからないという人も多いでしょう。やはり、そういう場合は弁護士のネットワークやNPO法人に足を運び、協力をお願いするのがいいかもしれません。

交通事故・弁護士全国ネットワーク
NPO法人 交通事故後遺障害者家族の会

結局のところは、「利害関係が異なる他人(特に利害関係が衝突する他人)を安易に信用して言いなりになると、食い物(カモ)にされる場合がある」という当たり前の経済原理が、自動車事故の局面にも当てはまるということでしょう。

お金の世界では、性善説は危険。

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    2010.05.18 Tue l 保険 l コメント (8) トラックバック (0) l top
    コメント
    1. 怖い話ですね・・・

    幸い、損保から支払いを受けるような事故等を起こしてないのでまだそういうトラブルにあったことはありませんが、そういう機会があったら、こちらもきちんと勉強することが大事ですね。お金の話に性善説はない、というのはその通りですね。。。
    2010.05.19 Wed l ミースケ. URL l 編集
    3. Re:怖い話ですね・・・

    >ほしママさん

    私も、幸いまだトラブルなしです。安全運転を心がけ、できる限りトラブルを回避したいですね☆
    2010.05.22 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    4. Re:はじめまして

    >ミースケさん

    ありがとうございます!
    面倒がって安易に流れると、損をするというケースがあるのかなと思いました。
    2010.05.22 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    5. まさに…

    知人がこの記事のような事態に直面しています。。

    昨年末に道路交通をなんら問題ない状態で自転車走行している際にトラックに撥ねられて、頭蓋骨骨折・脳挫傷・外傷性くも膜下出血・前歯全損などの重症。当初、相手方のトラック共済が治療費を全額カバーすることで話が進んでいたのですが、急に知人の過失を指摘しはじめ「ビタ一文払わん!」と言い出して、話は白紙に。保険の適用できない交通事故の高額な医療費が家族にのしかかり、家族が身体を壊す事態に…。

    結局は専門家を間に立てて交渉することになったようですが、ヒド過ぎて見てられません(涙)

    このエントリは大変参考になりました。ありがとうございます!
    2011.01.26 Wed l 虫とり小僧. URL l 編集
    6. Re:まさに…

    >虫とり小僧さん

    はじめまして!
    とてもたいへんな状況ですね・・・。普通に歩行中や自転車走行中にあっちから突っ込んできたら、酒用がないですよね。
    参考になってよかったです!上手く交渉が進むといいですね。
    2011.01.29 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    No title
    全国的にはどうなのか知りませんが、関西ではちょっと事情が違うでしょうね。被害者であることをいいことにゴネテル被害者も多いんじゃないかなと思います。
    自動車を運転する人は関西では注意しましょう。
    双方が弁護士に依頼するっていうのはいいことでしょうね。リーガルに解決するのが最善です。
    2012.05.05 Sat l tomtom. URL l 編集
    Re: No title
    関西の方は交渉うまいらしいですよね。ごねる人も多いでしょうね。感情的になりすぎずにリーガルに解決するのがベストですよね。
    2012.05.05 Sat l まつのすけ. URL l 編集
    損害保険 出し渋りでたどり着きました・・・
    25年以上保険を使った事はなかったのですが、事故をしてしまい、最大手の東京海上だから大丈夫だろうと思っていましたが、出し渋りにあいました。事故の時にドアミラーに当たり、ドアミラーが電動で戻らなくなり車から降りて元の位置に戻したのに、「相手の車の何処に当たったかわからないので保険は出ません」と言われ直してもらえませんでした。相手側の塗料も10cm以上ついているのに・・・本当にがっかりしました。
    2016.01.11 Mon l のり. URL l 編集
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