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5年に1度行われる公的年金の財政検証が始まり、厚労省は年金財政のシナリオを公表しました。名目運用利回りは3~6%と幅を持たせて、標準的なケースでは4.2%となりました。これは妥当かについて述べて、今後の日本の公的年金の行く末について述べます。

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厚労省のシナリオの妥当性

厚労省の年金財政の主なシナリオ3つと1982年~2012年の年率平均のデータを表にしました。厚労省の年金シナリオでは、名目運用利回り=実質経済成長率+物価上昇率+実質賃金上昇率と定義されていました。

運用利回りが賃金上昇率に一直線に比例するというのは異次元感がありますが、とりあえずここでは厚労省にしたがって出しました。

実質成長率物価上昇率実質賃金上昇率名目運用利回り
高成長1.4%2.0%2.6%6.0%
標準的0.4%1.2%2.6%4.2%
低成長-0.4%0.6%2.8%3.0%
1982-2012年2.0%0.7%0.7%3.4%

※1982~2012年のデータは、厚生労働省の賃金構造基本統計調査、IMF - World Economic Outlook Databases (2013年10月版)より計算

過去約30年の年率平均と厚労省のシナリオを比べると、厚労省は実質成長率は控えめに見積もっています。これは達成可能と思います。

ただし、控え目なのは、今後は名目成長率の伸び<インフレ率の伸びとなって、実費成長率は低迷すると見積もっているからに見えるのが不気味です。
日本の実質経済成長率の推移

物価上昇率は楽観的に見積もっています。ただ、物価上昇率は国民厚生を無視して手段を選ばなければ無理矢理上げることは可能です。「良い物価上昇」ではなく、「悪い物価上昇」ならば達成は可能です。
日本のインフレ率の推移

問題は賃金上昇率です。厚労省の試算は2.6~2.8%ですが、過去約30年の平均は0.7%に過ぎません。なんと実質賃金上昇率が2.6%を超えているのは、1989年・1990年のバブルの絶頂の2年間だけです。

継続的な2.6%以上の達成は極めて厳しいでしょう。儚い夢物語となりそうです。

日本の実質賃金成長率の推移


公的年金の行く末

現在の年金制度を前提とするならば、私が想定する公的年金のシナリオは以下の4つです。

  1. 一か八かの賭けに成功
  2. 良いインフレで安定化
  3. 悪いインフレで安定化
  4. 保険料引き上げ・給付開始年齢引き上げ

1.一か八かの賭けに成功

最近は公的年金(GPIF)が運用を改革してインフラ投資やプライベート・エクイティ投資を導入したり、株式の保有割合を高めるべきという議論が出ています。ハイリスク・ハイリターンの運用をすべきという有識者の声が強いです。

日本の人口構造が若年層が多くてこれから年金積立金が上昇していく状況ならわかりますが、日本は既にリタイアして年金を受給している層がどんどん増加しており、積立金は既に減少していく局面にあります。満期で償還されたお金を受給者に配っており、場合によっては積立金の資産を売却していく状況です。

つまり、個人に例えると引退世代にさしかかっていて、今後は追加投資は少なく、積み上げた資産を取り崩して、必要なキャッシュを作っている状態です。

このような状況では、資産運用で一度大きくやられてしまうと、元本が目減りした上に取り崩していくので、取り戻すのが非常に難しくなるため、一般論としては低リスク運用が無難です。詳しくは以下のエントリーをご参照ください。

一度下落したら再復活の道なし

ここにきてGPIFが高リスク運用に大々的に乗り出すというのは、一か八かの賭けです。上手くいったら運用益で年金を賄えますが、失敗したら積立金がパーになります。

1990年代後半に生命保険会社が次から次に倒産しましたが、苦しい経営状況を資産運用で一発逆転しようとして、傷口を広げて破産に至ったケースが多いです。

この賭けに失敗した場合、以下の2~4のいずれかになると思います。

2.良いインフレで安定化

日本政府は、物価上昇率(インフレ率)を上昇させることで、債務の実質価値を引き下げる政策に踏み込みました。「政府歳出の伸び<インフレ率」とすることで、徐々に債務を棒引きしていって、安定化させる政策です。

米国の大手資産運用会社ダブルラインキャピタルCEOの言葉を借りると、「インフレの本質はスローモーションのデフォルト」です。

インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があります。好景気・高成長とスタグフレーションです。インフレ率が伸び、実質経済成長率も伸び、国民の収入も伸びるという良いインフレになり、年金財政も安定化するシナリオが可能性としてはあります。

こうなってほしいと心から思います。

3.悪いインフレで安定化

インフレ率は上昇しますが、実質経済成長率は低迷し、国民の実質収入・実質賃金が伸び悩むケースです。

国民の生活は苦しくなる一方ですが、高インフレ&マクロスライド発動によって、年金財政は安定化していくシナリオです。

金融抑圧の年金版のようなイメージです。

4.保険料引き上げ・給付開始年齢引き上げ

保険料を引き上げて、給付開始年齢を引き上げて、年金財政を安定化していくシナリオです。大きな痛みが伴います。

南欧の構造改革と同じ苦難が伴うため、政治的に許容されるかは微妙です。これだけで年金財政を安定化していくのは難しいでしょう。


まとめ

厚労省の公的年金の財政検証のシナリオは相変わらず疑問を抱かざるをえないデータが踊っています。しかし、年金が破綻するような事態はないでしょう。

前述の1~4のいずれか、あるいは運用利回りの上昇、インフレ率の上昇、保険料引き上げ・給付開始年齢引き上げなどの組み合わせで壊滅的な破綻にまで至ることはないと思います。

公的年金が破綻した生保のようになる懸念はありますが、国の場合は一方的な給付条件の変更、保険料の値上げ、インフレ率の上昇によって踏み倒すことが可能です。

個人レベルでの対策としては、働いて収入を得ること、もしくは資産運用で収益を上げることが、過去最大級に重要になっているでしょう。

インフレ率の上昇や給付開始年齢の引き上げなどによって年金の実質価値は下がる可能性が極めて高いでしょうから。

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    2014.03.10 Mon l 家計・公的年金・社会保険 l コメント (5) トラックバック (0) l top
    コメント
    No title
    基本線は4.だと思っています。
    少子高齢化&長寿化となっている以上、
    制度的にそうならないとおかしい。

    それをもって、
    年金制度の崩壊と叫ぶ方もいますが、
    そうではないと思っています。
    単純に元々そういう制度であったっということ。

    ただ、そういう制度であることを、
    きちんと説明してこなかった政府にも問題があったと思っています。


    2014.03.10 Mon l mushoku2006. URL l 編集
    No title
    私も4です。
    破綻はないけれど、実質
    破綻ということでしょうか。
    2014.03.10 Mon l . URL l 編集
    管理人のみ閲覧できます
    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2014.03.10 Mon l . URL l 編集
    Re: No title
    賦課方式ですから、支払う側が少なくなって受給側が増えたら、支払いを増やすか受給を減らすかしかありませんよね。破綻はないですが、実質的にはあまり役に立たないという制度に将来的にはなる気がします。

    官僚が悪いとか厚労省が悪いとかいう問題ではなくて、人口動態から止むを得ないでしょう。

    高度成長期に大盤振る舞いしてしまい、ちょうど人口のボリュームが多い層が手厚い年金を受給する形になったのが、年金財政悪化の大きな要因でしたね。
    2014.03.10 Mon l まつのすけ. URL l 編集
    管理人のみ閲覧できます
    このコメントは管理人のみ閲覧できます
    2014.03.11 Tue l . URL l 編集
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