黒田日銀総裁の著書、「通貨の興亡―円、ドル、ユーロ、人民元の行方」を読みました。興味深かった点についてまとめました。超長期の為替変動についてはやはり購買力平価説を支持していました。
スポンサーリンク為替レートは購買力平価説が言うように、10年・20年といった超長期間には各国間のインフレ率格差を埋めるように動く(同感です)。
日本の場合は、1970年代以降は貯蓄過剰体質によって経常収支黒字が恒常的に発生したことから、それに匹敵する海外純投資が行われないと、どうしても円高になる傾向がある(この状況には今後変化が生じる可能性がありますね)。
同書発表前のデータによると、アメリカの輸出の90%以上、輸入の80%以上がドル建てに対して、日本の輸出の52%、輸出の70%がドル建て、円建ては36%・23%しかない。こうした状況では、日本の企業や国民は為替レートの安定を強く求めることになる。
ドルが基軸通貨であることがアメリカには絶大なプラス。為替差損を気にすることなく、貿易や投資を自由に行なえ、無制限に借金できる。財政赤字のみならず、企業赤字や家計赤字もいくらでもドルを発行することでファイナンスできる(いわゆる基軸通貨の特権ですね。この観点から円の国際化を提唱する識者もいますが、なかなか難しいでしょう)。
特権を享受している結果として、米国はどうしても放恣に流れることになり、その結果が双子の赤字に象徴されている。いつか非居住者がドルをこれ以上保有しないという限界が来た時、ドルは暴落してドル中心の世界は終わりになる。だが、それはかなり先のことだろうし、また、アメリカは賢明にそれを避けるように行動するかもしれない(賢明な行動を期待したいところです)。
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